少子高齢化が進み、墓の継承が大きな負担になっている人は少なくない。墓石や墓地の使用権を手放す“墓じまい”は年々増加し、樹木葬や海洋散骨など、埋葬も多様化している。

大阪府堺市のキリスト教式「海洋散骨 シャロームセレモニー」(吉田暁代表)は「新しい納骨の形として、海の上で祈りを捧げ、賛美歌やゴスペルを賛美して、大事な方を亡くされたご遺族に少しでも寄り添うことができれば」と、2018年に事業をスタートさせた。

海洋散骨とは、粉末状にした遺骨を水溶性の袋に納めて船の上から海にまくというもの。

シャロームセレモニーでは、専属のチャプレンであるWINGS Gospel House代表の足立学牧師が船上で司式し、賛美歌やゴスペルをリードしていく。海への散骨は、まさに土から創られた人が再び“自然に還(かえ)る”ような、すがすがしさがある。

吉田さんは「キリスト教ならではの聖霊のご臨在を感じてほしい。この働きを通してご遺族に癒やしや安らぎを提供したいのです」と、願っている。

これまでクリスチャンではない遺族からの依頼が多かったという。クリスチャンだった故人の意向を汲み、キリスト教で散骨できる業者を探してシャロームセレモニーを知ったという遺族があった。クリスチャンからも、夫の散骨を、という依頼に応えた。ただ、やはりそう多くはないというのが実状だ。

「問い合わせはありますが、成立しないことも多いです。依頼をしたけれども、親戚の同意が得られなくてキャンセルします、というのもありました」

子どもへの負担を考えて「墓はいらない」という人は、これから増え続けると予想される。高額な墓地や墓石が買えないという人もいる。そんな人たちの受け皿になりたいと、吉田さんは思う。散骨を考えている人の多くが、諸事情や社会通念から、まだ二の足を踏む段階という時代だが、埋葬方法としてこれから散骨は拡がっていくと吉田さんは考えている。

「散骨を選んだ方々に聖霊のご臨在を感じてもらう機会を提供する。そこにこの事業の存在意義があると思います」

今や葬儀は多様化の時代。家族葬など縮小化の傾向が加速して、格安で請け負う葬儀社も多い。「値崩れ状態です」と、吉田さん。散骨も同様だという。そういう流れに、吉田さんは疑問を持っている。

「一人の人の人生の最後を、価格だけで決めて送り出すというような。人の命が軽んじられているような、、、、、

2022年2月13日号掲載記事)

写真=吉田さん